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四半世紀を経た司法書士国民年金基金(2017年1月号から3月号まで)
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司法書士国民年金基金が大切にしてきた精神(2017年4月号から6月号まで)
司法書士国民年金基金で、自助努力。(2017年7月号から9月号まで)
介護する人、される人、そして年金。(2017年10月号から12月号まで)
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(2017年1月号から3月号まで掲載)
四半世紀を経た司法書士国民年金基金
  年金事情は、経済状況、社会情勢の変化を反映。

 1991年8月に司法書士国民年金基金が設立されてから、四半世紀が経ちました。年金法改正により国民年金(基礎年金)の二階部分として制度化された年金基金ですが、その後年金額の区分や掛金額の改訂が行われてきました。25年前には“豊かな未来を”と銘打っていたものも、近年では“確かな未来を”と変化しました。
 ご承知のとおり、わが国の年金事情はこの四半世紀でかなり様変わりしてきました。厚生年金や公務員の共済年金の二階部分(報酬比例部分)は受給開始が65歳まで繰り下げられ、物価上昇に対応した年金額の引き上げはマクロ経済スライドに変更され、2016年の法改正ではさらに年金額調整の要素に賃金の変動が加わりました。簡単に言えば、世代間格差を緩和するために高齢世代の年金を減額するというものです。
 世代や立場によって反応は様々だと思いますが、超少子社会を抜本的に改善しなければ、経済状況が好転しても、いずれさらなる対応を迫られるように思えます。2017年度の国の予算案は5年連続過去最大となった97.5兆円ですが、年金財源の視点から考えればなんとも腑に落ちないものがあります。

  ベストではないが常にベターである。

 このような状況下だからこそ、国民年金基金の重要性を強く感じます。実際のケースですが、年金受給者である父親(基金年金あり、厚生年金部分は少額)は、34歳の自営業の息子に国民年金基金の加入を強く勧め、1口目(受給年額24万円)に加入しました。
 2年後、増口することを勧めましたが、理屈はわかっていても、現役世代の感覚としては実感が薄く、稼ぐ→使う→稼ぐ…という現実のサイクルが切実で、余裕ができたら考えるという答えでした。父親は思いあぐねて、増口2口分(35歳を過ぎたため受給年額12万円)の掛金を当分の間負担するという提案をし、説得しました。
 息子の国民年金には何年分かの未納期間と免除期間がありますが、3口分の基金年金36万円を加えてなんとか年額100万円の将来の年金が想定できました。預貯金は消費してしまったらおしまいで、終身受給できる年金は少額でも長い老後の最低の安全保障がかなう、というのが、自身の少ない公的年金を補う国民年金基金のありがたさを身に染みて感じている元自営業の父親の思いでした。
 長年の金利の低下、経済状況の低迷化の日本にあって、「自助努力」の国民年金基金制度でさえ父親自身の加入時より条件が低くなっていることを残念に思いながらも、庶民大衆にとってはベストではないが常にベターであるのが年金制度である、と確信しています。そのような切実な思いを裏切らない日本の年金制度であって欲しい、というのがこの父親の願いです。

  従事者、ご家族にお勧めします。

 業務従事者、配偶者(いずれも厚生年金以外)の方にお勧めです。司法書士事務所で働く国民年金の第一号被保険者は、司法書士国民年金基金の加入者になることができ、将来職を離れても、“地域型”の国民年金基金に継続することができるので、安心です。司法書士国民年金基金のような“職能型”は、同一職能の方々の団結の証明でもありますので、本職の方からもぜひこの制度についての説明とお勧めをいただければ幸いです。また、国民年金第一号被保険者のご家族も、状況を勘案して司法書士国民年金基金に加入いただける場合がありますので、ぜひ一度ご相談ください。
 かつて国民年金基金制度は、掛金が全額社会保険料控除になることや年金所得控除などの利点について、一部のマスコミから金持ち優遇の制度などと酷評されたことがあります。でもそのような現象はありませんでした。現実は上記のように、庶民大衆にとってぎりぎりのセーフティーネットとなっています。このセーフティーネットを準備するかどうか、その決断の分かれ目は、拡大しつつある格差社会において、老後を迎えたときに上の方にいるのか下にいるのかの、自分自身の想像によるのではないかと思います。
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(2017年4月号から6月号まで掲載)
司法書士国民年金基金が大切にしてきた精神
  司法書士国民年金基金、誕生の“前夜”

 司法書士国民年金基金が設立される1ヵ月前の1991年(平成3年)7月、日本司法書士会連合会定時総会の決議に基づき、「司法書士の福利厚生制度の充実」を図ることを目的に、基金の設立総会が開催されました。
 この“福利厚生制度の充実”とは、何だったのでしょうか。時間を遡って見てみましょう。
 司法書士制度は、1872年(明治5年)、近代日本初の司法三職、代書人・代言人・証書人(『司法職務定制』)の一として誕生しました。その後の法改正によって現代化と充実が図られてきましたが、1956年(昭和31年)の司法書士法改正では、新たな選考認可試験=いわゆる“統一試験”と、司法書士会の強制設立・入会が定められました。
 それまでの司法書士の給源は、多くが裁判所、法務局の出身者でした。1956年の新たな“統一試験”でより広く社会から参入できるようになりましたが、それでもこの制度は、「(2年以内に)開業することを認可する」というものでしたから、ハードルの高さはまだ残っていました。
 それから22年後の1978年(昭和53年)、司法書士法改正により国家試験が導入され、「司法書士となる資格」が得られるようになったため、すぐには開業できない人々や現役の学生でも、資格を得て将来司法書士を開業することができるようになりました。
 この変化は、年金にとっても大きな意味がありました。
 1960年の前後までは、公務員経験者は恩給を、その後は公務員共済組合の年金を受給できましたが、統一試験〜国家試験以降は、いわゆる生え抜きの司法書士が誕生し、徐々に増えてきました。公務員共済組合や厚生年金などの被用者年金の期間が短い人々が増えてきたのです。司法書士を目指す人の自由度は高くなったのに、将来の年金は低くなってしまうという現象が生じてきました。
 このような現象の予測は、統一試験の時代からなされていました。日司連では1972年(昭和47年)から「司法書士福利厚生共済制度」を開始し、十分とはいえないまでも死亡や廃業の際に給付を行う制度を開始しました。一方、東京司法書士会では独自に司法書士協同組合のグループ保険を実施するなど、全国各地の会で司法書士の福利厚生の充実を図ってきたのです。

  司法書士界の福利厚生充実の精神を基盤としてきました。

 冒頭で述べたように、四半世紀前の司法書士国民年金基金の設立は「司法書士の福利厚生制度の充実」を図ることを目的としており、日司連定時総会の決議に基づくこの精神は今日まで受け継がれ、これからも変わりません。司法書士国民年金基金の安定的運営と充実は、司法書士の皆さんが一体となっているバロメーターであると言えるでしょう。
 日本国内の経済状況はもちろん、目まぐるしく動く世界の情勢の下で、年金制度も社会保障全般も、予測できない荒波に揉まれるかも知れません。それでも、司法書士国民年金基金が国民共通の土台である国民年金の“2階部分”として、より一層大切な役割を果たしていく、という自負は変わりません。本年1月から従来の確定拠出年金の改正型“iDeCo”が、私たちの連合体である国民年金基金連合会から展開されていますが、司法書士制度の充実発展のため皆さんが一体となってきたことを、司法書士国民年金基金が側面から支えてきた、というプライドもあります。基金のみならず年金一般についても、詳細をお知りになりたいとお考えのときは、まず当基金にお問い合わせいただければ幸いです。
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(2017年7月号から9月号まで掲載
司法書士国民年金基金で、自助努力。
   「2025年問題」と向き合わなければならない時

 「2025年問題」という言葉があります。2025年には戦後生まれの“団塊の世代”がすべて75歳以上になり、4人に1人が75歳以上(=後期高齢者)という社会になるのです。このコーナーでは繰り返し少子高齢化について触れてきました。それは小さな警告を発し続けたに過ぎませんでした。現実は、より厳しい“超少子化・超高齢化”と真正面から向き合わなければならない時が急速に近づいています。
 まず考えられることは、福祉・医療・介護などの社会保障関連財政の収支バランスはさらに大きく崩れ、さらに、超少子化・超高齢化は生産や雇用、さまざまな経済活動、日常の暮らしに大きな影響を及ぼします。どこかの時点で失速の限界点を超えてしまう不安は拭えません。
 それでも、人々の叡智でこれまでも様々な苦難を乗り越えてきたように、状況を打開し再び揚力を回復して飛び続けてくれると信じます。必ずそうなるよう努力しなければなりません。

   「自助努力」は自分の意思、自己決定。

 「自助努力」もまた、このコーナーで繰り返し記した言葉です。しばらく前からメディアもこの言葉を使っていました。しかしそれは、政治、行政や経済の世界から大衆に向かって語られる“上から目線”のニュアンスを含み、世間では胡散臭く感じる人々も少なくないように感じました。
 まっとうに考えるなら、古来からの名言「天は自ら助くる者を助く」を思い浮かべます(これについては、「『されども 天は 他を助くる者を さらに助く』と述べてみたかった……」 と記すお坊さんもいます)。
 努力したくてもできない人々がいるのが現実です。そのため成熟した社会は公的扶助や相互扶助、社会保障といった知恵を働かせます。しかし何らかの努力が可能な人は、自分の意思で、自己決定をして、自助努力を始めます。
 国民年金基金による「自助努力」は、国民年金の1号被保険者だけが行うことができます。世の中には、一定期間厚生年金に加入していた方(その間は2号被保険者)やその配偶者(3号被保険者)もいて、年金の受給額はまちまちです。もし全期間1号被保険者であったとすれば、その方が将来受給できるのは「老齢基礎年金」のみです。(満額は、40年間納付した場合、年779,300円。本誌2016年7〜9月号に年金額のシミュレーションを記述していますので、参考にしていただければ幸いです)
 国民年金基金は、全国民共通の年金の「基礎年金=土台部分」の上に乗せるもので、あくまでご自身の考えによって「2階部分」の積み上げを実行し、そしてそれらの成果を「終身受給」するのです。

   先手を打つことは、とても大切です。

 社会情勢の様々な調査結果や統計には、今では簡単に触れることができます。しかし、近所の高齢者世帯や独居世帯、果ては空家の急増などは、“数値”の羅列より遥かにリアルです。駅前を通ればシャッターが閉じられた店舗が並びます。病院には高齢の患者さんがたくさんいます。少し前までは、予測や想像の中のものであった現象が今は現実となっていて、こんなに急速に眼や足腰の老化現象が進むなどとは10年前には想像もしていなかった自分自身も、その光景の中にいるのです。
 「所有者不明の土地が九州の面積を上回る」などというニュースを見ると、あのバブル経済下の土地神話とはいったい何だったのだろうと……。様々な変化は急速にやってきます。まだそんなことになるはずがない、と思いたいのはやまやまですが、どうか“自助努力という先手”を打たれるよう、お勧めいたします。
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(2017年10月号から12月号まで掲載)
介護する人、される人、そして年金。
   実際に直面しなければ、わからないこと

 日本の要介護・要支援認定者数は、現在約630万人で、高齢者全体の18%に達しています。男女比は3:7と圧倒的に女性が多くなっています。男性に比べ女性が長寿であることや、女性に多い骨粗鬆症などの影響があるのではないでしょうか。
 近年、要介護認定を受けた人は急速に増え続け、介護保険制度が始まってから17年の間に当初の3倍以上になっているようです。しかしそれも介護保険制度の上に表れた数値で、実際の世の中にはさらに多くの介護・介助を受けている人たちが存在していると思われます。
 ところで、介護という社会問題やそれに対応するシステム等は、法律や社会保障などの分野に携わっている方々には先刻ご承知のことと思われますが、それは主に理論上の話ではないでしょうか。現実の問題は直面してみなければわからないことだらけ、とも言えます。理論と実際の較差は、部屋の敷居の段差よりも大きいかも知れません。

   制度やデータを調べても、見えない現実

 病気、けが、加齢による生活機能の低下、認知機能の低下など、要介護・要支援の対象はいくつもありますが、突然訪れる問題の一つに転倒による骨折があります。その多くが大腿骨頸部骨折で、これはほぼ早急に手術することになります。この期間=「急性期」は外科・整形外科の医療ですが、病棟に足を踏み入れると、骨折患者がこんなに大勢いるのか、年齢幅もこんなにあるのかと驚かされます。
 手術後、急性期のリハビリと並行して、家族はすぐに介護認定の手続を始めなければなりません。ソーシャルワーカー等の助言を得ながら地域の支援センターに足を運んだり調査を受けたりします。
 手術から数日の間に、「回復期」リハビリの病院への転院を決めなければならないので、病院を訪問し説明を受けたり見学したり、医師、看護師、理学療法士たちからの指導助言に従って、急ぎの申請や諸手続きに追われます。介護認定がなされたらケアマネージャーも選ばなければなりません。
 そしてなにより、退院後に在宅介護になるならばその受け入れ準備に忙殺されます。寝室、各部屋のレイアウト、トイレや浴室の対策……まるで引っ越しのように気が遠くなるような作業になることもあります。
 要介護や要支援のパターンは人の数だけあると言えます。施設の利用でも通所や入所、それらから受けるサービスの種類と費用は、症状や程度で刻々と変化します。しかし介護保険制度に支えられる範疇はまだ安堵できる部分で、それまで特段の心配もなく過ごしていた家族の日常生活は、パターンが一変します。そしてこの変化こそ、想像していなかったことなのです。

   年金はセーフティネットとなることができるか

 これまでは、超高齢社会における自分自身の老後の問題として年金を考えてきました。しかしこれからは、家族の変化に対応する視点も重視しなければなりません。介護される人の収入・支出はもとより、介護する側の収入・支出も重要です。それは単に支出額が増えるということではなく、やらなければならない事がどんどん増え、多忙になり、疲労していく、ということです。「老々介護」の数も質も変化し、さらには配偶者の親の「多重介護」「ダブルケア」「遠距離介護」などという形態が増えつつある今、ご自身が現在は30代、40代であっても、あと20年、30年経ったら、と想像してみることが極めて重要です。国民年金基金は全てをカバーすることはできなくても、セーフティネットの一翼を担う事になるのは確かです。
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